転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


59 冒険者ギルドは大助かり?



 MP回復をしてから冒険者さんたちの毒消しを再開。
 今までは毒でHPがかなり減っている人ばっかりだったけど、5人ほど治したところで大丈夫そうな人が多くなったからキュアをかけるのをやめにした。
 だってキュア・ポイズンはMPを8ポイントも使うし、それにキュアの4ポイントを足すとあっと言う間にMPが無くなっちゃうんだもん。

 レベルが3になって僕の最大MPは160まで増えたけど、これでも両方だと13人しか魔法がかけられないからね。
 キュアをやめればそれだけ多くの人にキュア・ポイズンがかけられるようになるから、そうする事にしたんだ。

 それにやっぱり駄目そうな人がいても、僕が教えた方法でMPを回復した見習い神官のお姉さんがルルモアさんから、

「この人の生命力がかなり下がってるから、キュアをかけてあげてください」

 って言われて治してくれてるから、僕は安心して毒消しをして周る事ができたんだ。

 それからもう一回MPの回復をして、5人くらい治したころかな?

「毒消しポーションが届きました!」

 ギルド職員の制服を着たお兄さんがそう言いながら木の箱を持って冒険者ギルドに入ってきたんだ。
 この薬での治療が始まったおかげで毒に関しては思ったよりも早く残った人たちを治す事ができたから、その後は見習い神官のお姉さんといっしょに僕もHPが減っている人を見つけてはキュアをかけて周る。

 で、そうしているうちに中央の大神殿からも数人の司祭様が来てくれて、やっと全員の治療が終わったんだ。



「冒険者ギルドに60人以上の怪我人が運び込まれた時はもう駄目かと思ったけど、なんとかなって本当に良かったわ」

 ルルモアさんは司祭様や冒険者さんたちが引き上げて、少しがらんとした雰囲気になっている冒険者ギルドを見渡しながらそんな事を言った。
 そっか、そんなにいたのか。
 僕たちが冒険者ギルドに来た時にはもうポーションや見習い神官のお姉さんの魔法で何人かは助かってたらしいんだけど、そんなのはすぐに底を突いてしまったからルルモアさんは正直、もうどうにもならないって思ってたんだって。

「ルディーン君が来てくれて本当に助かったわ」

「ホントびっくりしたよ。だって、ギルドに来たらみんなたおれてるんだもん。なんで!? って思ったよ。でね、よく見たらみんなどくになってたからこれはたいへんだって! だからぼく、なんとかしなきゃって思ってがんばったんだ」

 普通にお別れの挨拶をする為に来ただけなのに、こんな事になってるんだもん。
 でも、昨日レベルが上がっててホントよかったなぁ。
 2レベルのままだったらキュア・ポイズンは使えなかったもん、これもお父さんが森に連れて行ってくれたおかげだね。

「それでね、今日のことがなんとかなったのは、お父さんのおかげなんだよ」

「えっ、俺?」

 だから僕はそう言ったんだけど、お父さんは急に自分の事を言われたもんだからびっくりしちゃって、どうしてなのって顔をしてるんだもん。
 もう、何で解んないかなぁ?

「だって昨日、お父さんがぼくのまほうはゆみとおんなじだっておしえてくれたから、そのおかげでいっぱいたおせてレベルが上がったんだもん。もし昨日上がってなかったらキュア・ポイズンはまだ使えなかったから、今日ぼくがここにいてもどうしようもなかったと思うんだ。だから今日のことはお父さんのおかげなんだよ」

 僕はえっへん! と胸を張って、そうお父さんに教えてあげたんだ。
 ところがそれを聞いて複雑そうな顔をする、お父さんとルルモアさん。
 何でか解んないけど、2人して困ったかのように顔を見合わせてたんだ。

「そうか、じゃあ俺がルディーンを森中引っ張りまわして魔物を狩らせたのも、一応ギルドの役に立ったと言う事か」

「ええ、そうみたいね。それで助かったのは事実だわ。でも、小さな子供に無理をさせるのはやっぱり許せないけど」

 そして2人はそんな表情のまま、苦笑い。
 そう言えばお父さん、昨日僕がフラフラになっちゃったもんだからルルモアさんに叱られたんだっけ。
 と言う事はやっぱりお父さんがやった事って怒られる事なのかなぁ? でも昨日の事がなかったら今日、もっと大変になっていたはずだし。

 う〜ん、よく解んないや。
 まぁとりあえずみんな助かったんだから、めでたしめでたし! って事でいいかな? って僕は思ってたんだ。
 でも、この話はこれで終わりではなかったみたい。

「さて、じゃあそろそろルディーン君が行った治療に対するギルドからの報酬の話をするわね」

 ルルモアさんがいきなりこんな事を言い出したんだ。
 報酬? 僕、別に依頼を受けてやったわけじゃないんだけど。
 そう思ったから、

「ぼく、みんながたいへんそうだたから、まほうをかけてただけだよ。クエストを受けたわけじゃないのに、何で?」

 って聞いたんだけど、そしたらルルモアさんは働いた以上は報酬が出るのは当たり前だって笑いながらそう言ったんだ。

「今回の事は確かにギルドからの依頼ではなかったわ。でも、ルディーン君が魔法を使ってくれなければ多くの冒険者が命を落としたり、重い後遺症が残って引退しなければならなかったと思うのよ。だからルディーン君がキュア・ポイズンを使えると知っていたら間違いなく依頼を出していたはずよ」

「でもさぁ、ぼくがかってにまほうを使ったんだから、やっぱりお金をもらうのは」

「はい、ストップ! ルディーン君。人の話は最後まで聞こうね」

 依頼を出していたはずって言っても僕が勝手にやったのには変わらないと思ったから、やっぱりお金は貰えないよって言おうとしたんだけど、それを言い切る前にルルモアさんに言葉を遮られてしまった。
 だから人の話を最後まで聞かないのはルルモアさんの方じゃないかって僕は思ったんだけど、先に話をしていたのは確かにルルモアさんなんだから黙って聞く事にしたんだ。

「あのね、ルディーン君。そもそもキュアやキュア・ポイズンのような治癒系魔法を街で使った場合、家族や親類縁者、それにパーティーメンバーなどの特別な場合じゃなければ、必ず相手からお金を取らないといけない規則になっているのよ」

「ええっ!? 取らなきゃダメなの?」

 そしたらルルモアさんが、そんな規則があるんだって教えてくれたんだ。

「ええ、そうよ。これは冒険者ギルドだけじゃなく、殆どの国でそういう決まりになっているのよ」

 これにはびっくり! なんとこれって国で決めてる事なんだね。
 ならお金取らないと捕まっちゃうのかなぁ? それにさぁ、なんで? 人助けなのに。

「それってけがしてる人をなおしたら、ぜったい取らないといけないの? なんで?」

「それはねぇ、それを生業にしている人がいるからなのよ」

 僕の質問の答えを、ルルモアさんは丁寧に話してくれた。

「怪我をしたり病気になった場合、普通はみんな神殿に行って司祭様に魔法をかけてもらったり、そこまでするほど酷くなかったとしても薬局に行って薬草を使ったお薬を買うでしょ? 中には値段の高いマジックポーションを買う人もいるわね。でもさぁ、もし治癒魔法が使える人が全部ただで治しちゃったら、その人たちはどうなると思う?」

「たぶん、こまっちゃうね」

「そうよね。だから治癒系の魔法を使う場合はきちんとお金を取るようにって、この魔法はこれだけってきちんと値段まで決められてるのよ」

 そっか、確かにお金を貰わずにみんな治しちゃったら、そう言う人たちは仕事がなくなっちゃうもん。
 だからお金を取らないといけないって事になってるんだね。
 あっでも、黙って治しちゃえば解んないんじゃないかなぁ? そう思って聞いてみたら、

「普通の神官は聖印に治癒魔法の記録が残るから、黙っていてもいずれ解っちゃうのよ。ルディーン君の場合は冒険者ギルドカードがそれにあたるのよ。あれも神官の持っている聖印同様、治癒魔法を使ったり使われたりしたらその記録が残るようになってるわ。街に入る時は身分証明の為に門番に見せるでしょ? だから魔法を使った時に街にいたかどうかなんてすぐに解っちゃうんだから、こっそり使おうとしたってダメよ」

「そっかぁ」

 どうやら誰かが怪我をしてても、こっそり使う事はできないみたい。
 あっでも、街の外に連れ出せばいいって事かな?

「そうね。街の外まで連れ出せばその法は適用されないから、普通なら問題はないわね。ただ治してもらった人が冒険者で、なおかつポーションなどで治療したのならお金を払わなければいけなくなるわよ」

「なんで? 外ならいいんじゃないの?」

「それはね、冒険者ギルドがそう決めているからなのよ」

 どうやらこれは国が決めた事じゃなくって、冒険者の間だけの取り決めらしいんだ。
 だからそれ以外の人なら何の問題も無いけど、冒険者だけはポーションなんかのお金がかかる治療法を使った場合は、ちゃんとお金を払わないといけないんだって。
 ではなぜ冒険者だけはだめなのか? それにもちゃんとした理由があったんだ。

「例えばすごく強いモンスターが現れて、その討伐に冒険者たちが招集されたとするわね。そこで怪我をした強い人が弱い人を脅してポーションを使わせて、そのお金をもらえなければ困っちゃうでしょ?」

「ええっ、そんなこと、あるの!?」

「それがねぇ、過去にそんな事が実際に起こったらしいのよ。弱い冒険者は討伐の役に立たないからポーションで役に立てなんて言うとんでもない理屈をつけてね。でもその弱い冒険者もクエストを受けたのではなく召集されたのだから、そんな言い分をギルドが許すわけには行かないでしょ? だから冒険者に限り、ポーションなどを使った場合は、その値段を払わなければいけないって事になったって訳。まぁルディーン君の場合は魔法で治せちゃうから、お金を取らないといけないなんて事にはならないと思うけどね」

 そっか、そんな事があったんだね。
 確かにポーションとかは値段が高いって言うし、それを無理やり取られちゃったら大変だから、その規則はいるよね。
 こうして話を聞いてお金を取る理由がちゃんと解ったから、僕はやっと納得したんだ。

「それじゃあルディーン君が解ってくれたと言うことで、報酬の話に移るわね。カルロッテちゃん、治癒魔法の相場っていくらだっけ?」

「私のような見習いならキュア1回で銀貨20枚ですが、ルディーンさんの場合、キュア・ポイズンを使えるという事は中位神官に当たりますから回復量から考えてキュアで銀貨60枚。キュア・ポイズンは中位治癒魔法ですから金貨1枚と銀貨50枚ですね」

「「はい?」」

 金額を聞いて、思わずハモッてしまう僕とお父さん。

 えっと、僕って何人治したっけ? なんかすごい事になってそうなんだけど。
 僕はそう思ってとんでもない事になったぞ、なんて思ってたんだけど……。

「そう、思ったより安いのね。毒消しや体力回復にポーションを使ってたらその倍以上かかってただろうけど、ポーションを使った人たちからは公平を期するためにも治癒魔法での代金しかもらえないからなぁ。ギルドの予算を考えると、もしルディーン君がいなかったらと思うとぞっとするわね。本当に助かったわ」

 どうやら冒険者ギルド的にはとっても安かったらしい。
 う〜ん、ポーションって本当に値段が高いんだなぁ。


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